皆様、こんにちは。谷です。
5月とは思えない暑さが続いています。体調に気を付けてお過ごしくださいませ。
さて、今回はA.ランゲ&ゾーネの復興についてお伝えしていきます。
約50年間の休眠ブランドを誰が復興に導いたのでしょうか?ランゲ1にも搭載されている150年以上の歴史を持つパーツとは?ランゲ1からひも解くA.ランゲ&ゾーネの歴史についてお伝えしてきます。
A.ランゲ&ゾーネが復興した時の凄さとは?
東ドイツを拠点としていたため、東西冷戦によりブランド消滅となったA.ランゲ&ゾーネ。しかし、あきらめることなく、1990年には再復興を果たしました。
最盛期を極めた1920年代のA.ランゲ&ゾーネの技法は、A.ランゲ&ゾーネの創設者フェルディナンド・アドルフ・ランゲから孫たちへ脈々と受け継がれ改良されていき、魅力的なムーブメントを造り出しました。4代目のウォルター・ランゲは危険を冒してでもA.ランゲ&ゾーネのムーブメント製作の基礎になった『旅の手帳」を西ドイツへ持ち込みました。
1990年に再復興をしてから旅の手帳をもとに、最盛期のA.ランゲ&ゾーネの技術をなんとか再現しようと検証を重ねます。
工場は燃えてなくなり、少ない資料をもとに何度もチャレンジと失敗を繰り返し、1994年A.ランゲ&ゾーネは最初の復興4大コレクションを発表します。
そして、2001年には空襲で破壊された本社工房が復帰。2015年には隣接する場所に最新技術を備えた新工場も設立しました。再興からわずか20年足らずで、世界5大ブランドに数えられるほどのメーカーへと成長を遂げ、奇跡の復興となりました。
続いては、ランゲ1に搭載されている『アウトサイズデイト』について。
『アウトサイズデイト』のモチーフとなった
『5分時計』とは?
『アウトサイズデイト』の機構の原型となる表示方法(窓枠ごとに独立して動くシステム)についてはA.ランゲ&ゾーネができる前。つまり、1845年以前にさかのぼります。
A.ランゲ&ゾーネの創設者でもあるフェルディナンド・アドルフ・ランゲはA.ランゲ&ゾーネを創立するまでは、現在のドイツ・ザクセン州の領域とほぼ同じサイズと言われるザクセン王国の首都ドレスデンにいました。
彼はドレスデンにて、師匠グートケスの下で修業を積んだ後、フランスやスイスなどの諸外国に行き時計の勉強をしました。
そして数年間勉強したのちに戻ってきてからは再び師匠グートケスのもとで働いたのです。
その時にグートケスと共同で作成したのがゼンパー歌劇場にある『5分時計』です。
『5分時計』は1841年に製作されました。ランゲがA.ランゲ&ゾーネを立ち上げる4年前のことでした。
どうして5分時計をつくるよう
ザクセン王はグートケスに命令したのか?
『5分時計』が製作された背景には当時のザクセンの王の趣味や考えがありました。
当時のザクセン3代目の国王であったフリードリヒ・アウグスト2世(ザクセン王)は、ドレスデンを華やかな都として発展させ、ザクセンが繁栄した時代の有名な君主として現在も高く評価されています。
ザクセン王は様々な生産活動(手工業や商業)を優遇する政策や道路の建設に力を入れますが、その結果として、ザクセンの産業や経済は著しく発展します。(この取り組みの一つがフェルディナンド・アドルフ・ランゲが取り組んだグラスヒュッテの町おこしとして、時計工房を建てたことです。)
さらに、建築を愛する王は、歳入が増えるとそれを資金にしてドレスデンの町をルネサンス様式からバロック様式に様変わりさせます。
優れた建築家を呼び寄せ、華麗なバロック様式のツヴィンガー宮殿(Zwinger)、東洋風のピルニッツ宮殿(Pillnitz)といった美しい建造物を造営し、庭園や館から市民の住居まで幅広く街を改革していき、火災による被害を受けていたドレスデン旧市街は新しく再建。
現在も「ドイツ・バロックの真珠」とうたわれる美しいドレスデンの街並みはこの頃にほぼ完成したといわれています。
こうしてザクセン王はザクセンを強国へと押し上げていきました。
またザクセン王は豪奢を好み、しばしば口実を見つけてはパーティを開いていたといわれるほどお祭り好きでした。ヴェネツィア・スタイルの華やかな宮廷舞踏会を開くことでも有名だったと言われています。
そんなザクセン王が宮廷の時計技師であるグートケス、その弟子であるフェルディナンド・アドルフ・ランゲに命じたのが「時計の機械音を一切邪魔されずに歌劇を鑑賞できるようにと、可能な限り静かでどの席からも読み取れる歌劇用時計の開発する事」でした。
グートケスはランゲと共に、ひとつの窓に分を5分刻みで表示する、いわばデジタル表示のモデルを製作しました。
それが、『5分時計』です。
新生A.ランゲ&ゾーネが「5分時計」からインスピレーションを得て作りだした『アウトサイズデイト』
『アウトサイズデイト』はこの5分時計からインスピレーションを得て開発され、1994年に発表されたランゲ1に初めて搭載されました。『アウトサイズデイト』と非凡なダイヤルを持つランゲ1が世に出たことによって、何十年もドイツの東西分裂の時代を経て、再びA.ランゲ&ゾーネの名に恥じない優れた時計を作るという、創始者の曾孫ウォルター・ランゲの夢が叶ったのです。
では、ランゲ1の特徴をお伝えしていきます。
独特なデザインが目に留まる?
20年以上変わらない文字盤の特徴とは?
手に取り、最初に目にする文字盤には、オフセンターで配置されたダイアル。
時分がわかるメインダイヤル以外の空きスペースには、スモールセコンドやパワーリザーブの表示を収めています。デザイン性を追求した時計でありながら、視認性を高める実利的なデザインとなっています。
アシンメトリーなデザインではありますが、実はアウトサイズデイトの中点、パワーリザーブ針の軸、スモールセコンドの軸は一直線で繋がり、そこからメインダイヤルの軸へ。メインダイヤルの軸からアウトサイズデイトの中点へとつなげると、二等辺三角形が出来上がります。
非対称なダイヤルデザインに、黄金比率を用いたシンメトリーの図形を入れ込むことで、印象に残るデザインが出来上がります。
これは『ランゲ1』の独創的な顔が、デザイン先行で開発されていることを示します。更に、至る所に【ランゲ&ゾーネ】の伝統もつまっています。
文字盤上にアラビア数字で示された日付を表示するアウトサイズデイトは、初代ランゲである、アドルフ・ランゲ氏が師であるグートケスと共に開発したゼンパー歌劇場の5分時計から由来していることは皆様ご存じでしょう。
時計本体だけに留まらず、尾錠やツク棒まで美しい研磨が施されています。
端から端まで手の掛かった抜かりのなさは、まさに「Never stand still(決して立ち止まらない)」を大切にしている、A.ランゲ&ゾーネならではの作り込みとなっております。
ぜひ、店頭でお確かめくださいませ。
A.ランゲ&ゾーネ(A.Lange & Sohne)
モデル名:ランゲ1
品番: LS1914AD 191.032
ケース径:38.5mm
防水:3気圧防水
ケース素材:K18ピンクゴールド
まとめ
いかがでしたか?
150年以上も前に考えたものとは思えない『5分時計』。
また、A.ランゲ&ゾーネの名に恥じない新たな時計作りで『アウトサイズデイト』を開発したウォルター・ランゲをはじめとした技術者の方の力があってこそのA.ランゲ&ゾーネ。
ぜひ、店舗にお越しいただきランゲの歴史や世界観に触れてみてくださいませ。
皆様のご来店をスタッフ一同お待ちいたしております。