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定番ブランドがアップデートを続ける時計を 僕らも固定観念なく着けこなしたい|バーゼルワールド2019

3月21~27日の間開催されていたバーゼルワールドに今年も訪れた。

すでに読者のみなさんも知るところだと思うので、まず会場の様子をはっきりとお伝えすると、例年の盛り上がりはなく、やや寂しい印象を受けた。噂によると、出展ブランドの減った数は500とも600とも言われている。

ただまあ、取材自体が失敗したかというとそんなことはない。収穫十分、むしろ1つずつ丁寧に時計を見ることさえできた。

2020年は日本のゴールデンウィーク付近に会期が移動し、ジュネーブサロンと連なるようにしてコンベンションを開催するという。現時点ではなかなか未来を予想することは難しいけれど、我々が普段接する大きなブランドほど、今後は展示会のタイミングに捉われず自分たちのペースで新作を発表していく気がしている。

ある種100年以上にもわたって続いた“バーゼルワールド”というお祭り騒ぎが終焉を迎えるのかもしれない。

定番ブランドがアップデートを続ける時計を 僕らも固定観念なく着けこなしたい|バーゼルワールド2019 - FEATURING 関口 優 |DSC6850-1-830x609割と記念すべきタイミングだったのかもしれない今回のバーゼルで、出水さんとのこんな写真が撮れたのも何かのめぐり合わせだろうか、、、。

展示会がどうであれ、今後も一緒に日本の時計界を盛り上げましょうね!

スポーツとクラシックの両方向に進化が続く

と、まあ、時計自体はかなり良いものがありましたよ!
限定品も多いので争奪戦必至ですが、見るべき新作のお話をいたしましょう。

全体を通して、こうしたスポーツモデル偏重の流れは続いていたが、復刻やクラシカルなモデルも粒ぞろいだった印象。現代の技術でブランドのアーカイブモデルを再現した“ネオクラシック”なトレンドが訪れており、個人的にとても歓迎している。
なぜかというと、着る服とのバランスが非常に取りやすくなってきているから。
スポーツロレックスももちろん良いけれど、デニムにニットなどとのコーディネートではドヤ感が出てトゥーマッチが漂う場合も多い。

そんな、ネオクラシックに該当しそうな時計、筆頭はこちら。
定番ブランドがアップデートを続ける時計を 僕らも固定観念なく着けこなしたい|バーゼルワールド2019 - FEATURING 関口 優 |IMG_1129a-830x623ブライトリングのナビタイマーRef.806 1959エディションと、ゼニスの初代エル・プリメロ復刻です。それぞれ、時計史に残る名作を最新の技術で完全再現されているのが良い。ナビタイマーは、おそらくファンが最も待ち望んだ復刻だし、現代に即したサイズ感(とはいえ初代も40mm径ですが)に改められているため懐かしくもモダンな時計に仕上がっている。初代ナビタイマーをアンティークで買おうと思ったらこの新作の値段では買えないし、こうして自社の復刻で話題を作ることはブライトリングの企業価値を底上げし、結果時計の価値も高めることになるはず。

定番ブランドがアップデートを続ける時計を 僕らも固定観念なく着けこなしたい|バーゼルワールド2019 - FEATURING 関口 優 |IMG_4797-2-623x830エル・プリメロは、当時のモデルをサイズまで含めて完全再現。他にもWGとPGがあるが、最近各所で目にするYGが新鮮だ。ここ10年くらいはゴールドといえばPGで、細かな色味の違いで各社の個性としていたと思う。よりクラシカルなイメージ、ともすればオジサン色であるYGが復権すれば面白い。他人と被らず、しかもファッション的にもイケてるクラシカルな色味として大活躍するだろう。ただ、エルプリ50周年を祝うモデルだけあり、限定50本というのが、、、もっと作ってよ! ゼニスさん!!である。

一方、対極にあるスポーツウオッチは、よりモダンに進化した時計が多い。なかでも、ブルガリが5つめの”最薄”ワールドレコードを手にした、オクト フィニッシモ クロノグラフとウブロのクラシック・フュージョン フェラーリは出色の出来。
定番ブランドがアップデートを続ける時計を 僕らも固定観念なく着けこなしたい|バーゼルワールド2019 - FEATURING 関口 優 |IMG_4979-830x653オクト フィニッシモは薄く、強靭なケースであることはコレクションで共通の個性だが、クロノグラフのインジケーターデザインのさりげなさが、さすがイタリタンデザイン、と唸らされた。昨今のクラシカルウオッチ人気は、クロノグラフに代表されるメカメカしいトゥーマッチさを敬遠した反発の動きと考えるが、本機はそれらと一線を画す絶妙にうるさくないデザインなのだ。3つのインダイアルのバランスに何よりこだわったと、ブルガリ時計部門のマネージング・ディレクターであるグイド・テレーニ氏が教えてくれた。サテン仕上げのグレーカラーダイアルと、黒色のインデックスとの高すぎないコントラストも素晴らしいと思う。スウェードのジャケットなんかと合わせるだけで、ローマの洒落者を気取れる気がする。
定番ブランドがアップデートを続ける時計を 僕らも固定観念なく着けこなしたい|バーゼルワールド2019 - FEATURING 関口 優 |IMG_4832-623x830一方、ウブロは“これはクラシック・フュージョンなのか?”と思わずクエスチョンが浮かぶ新作を出してきた。フェラーリがデザインを手がけたとのことだが、たしかに従来の時計っぽくないケース形状だった。ラグとケース本体の間は肉抜きされ、全体に流線型の立体的なフォルムは非常に新しさを感じさせる。また、フェラーリのロゴも12時に位置しており、コラボモデル感が強くないのも嬉しい。クラシック・フュージョンとして初めて自社キャリバー・ウニコを搭載した、という点も時計好きには刺さりそうだ。
ブルガリもウブロも、ともにオクトやビッグ・バン、クラシック・フュージョンといったアイコニックなデザインの時計があるものの、新たな挑戦を忘れていないところにたまらなく魅了される。いつか、カッチリ金融系の職業の方がオクトを仕事用に選ぶような時代が来るかもしれない。ブランド側も常にアップデートしている以上、時計の着け手側である我々も日々アップデートして新しいこなし方を楽しみたいものだ。

ホディンキー 日本版編集長関口 優
1984年生まれ。芸能雑誌やモノ情報誌「GetNavi」の編集を経て、2016年より時計専門誌「WATCHNAVI」編集長に就任。2019年には腕時計愛好家を魅了するライフスタイル・メディア「HODINKEE」日本版初代編集長に就任。まず自分が試すことをモットーとしており、腕時計を買い続ける日々を送る。