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50周年を迎えたいまだから――。改めて人気定番・自動巻きクロノグラフの魅力を考えました|関口 優

3者3様のクロノグラフ
歩んだ歴史に思いを馳せて

今年、時計業界は多くのアニバーサリーでにぎわっています。ちょうど50年前の1969年、人類初の月面着陸にオメガのスピードマスターが携行されたり、現在もつづく大手ブランド4社が集まって自動巻きクロノグラフムーブを開発したり、ロレックスのデイトナにも用いられた高振動クロノの草分けであるエル・プリメロをゼニスが生み出したり、、、いまだにスイスで語り草となっているクオーツショックが起きた(日本人が起こした)のもこの年でしたから、本当に激動の出来事が一年のうちにまとまってやってきたのです。
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さて、そんな数々の偉業のなかでも、自動巻きクロノの出自は極めてドラマティックです。

世界発の自動巻きクロノグラフムーブメントである「クロノマチック」は、タグ・ホイヤー、ブライトリング、ハミルトン・ビューレン、それにクロノグラフ専業のデュボア・デプラが連合を組んで開発したから。各社とも本心では、自社が最も早く開発に成功したかったに違いないけれど、腕時計の進化のために束の間の共同戦線をしいたという点で涙モノの物語だと筆者は思うのです。

しかしながら、そうまでして開発された自動巻きクロノグラフが本当の意味で日の目を見たのは80年代半ばに入ってから。クオーツショックを乗り越えたスイス時計が、その後日本でも大人気となるのだから皮肉なものです。

このようなストーリー性に惹かれ、私もクロノグラフが大好きになりました。何しろ、それでゼニスのクロノマスターを購入したくらいですから。で、ですね、いま自動巻きクロノグラフというと人気カテゴリだけあって数多くのブランドがラインナップしています。そのなかで50周年目のアニバーサリーを祝うにふさわしい名機を、その歴史に思いを馳せながら厳選して3本紹介したいと思います。それは、ズバリ、タグ・ホイヤーのモナコ、ブライトリングのプレミエB01、グランドセイコーのスポーツコレクションです。

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モナコは角型防水かつ自動巻きというダブルの世界初を達成して1969年に生まれた時計。筆者も所有していますが、当時のデザインが復刻された左リューズのキャリバー11は、色あせない魅力を持った超傑作です。ありがたいことに、現在でも定番モデルとしてラインナップされているため、現代のクオイリティでクラシカルなデザインを存分に味わえます。件の競合4社が手を取り合って作り上げたストーリーに思いを馳せることができるのもうれしいですね!

そんなタグ・ホイヤーと共に、「クロノマチック」を作り上げたブライトリング(ホイヤー社のジャック・ホイヤーとブライトリング社のウィリー・ブライトリングは、ライバルながら盟友として交流があったそう)は、そのムーブに独自の換装を施しCal.12とした自動巻きクロノグラフを完成させます。

その後、爆発的人気となったクロノマットを発表(1983年)し、クオーツショック克服の起爆剤となりますが、今回あえて推したいのは最新コレクションであるプレミエ。とくに自社ムーブメントを搭載した、プレミエ B01は1940年代、つまり自動巻きクロノグラフ以前のデザインを踏襲したコレクションです。本機の何が良いかというと、手巻き時代のクロノグラフを現代的に解釈しただけあり、2カウンターインダイアルや角型のプッシュボタンなど、クラシカルな装いが満載されつつも絶妙にモダンであるところ。かつては基本的に金無垢のクロノが多かったですがこちらはSSであり、普段使いにも適しているのが好印象ですね。歴史に裏打ちされた正統派クロノグラフとして、単なるデザインにとどまらないクロノグラフメーカーの矜持が感じられます。

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40年代に存在したプレミエのアンティーク。デザイン的な共通項が見て取れます
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ベントレーとのコラボモデルではこんなカラーリングも。

さて、上記スイス勢にひけをとらないクロノグラフが日本にもあります。セイコーは当時、東京五輪の公式計時を担当すべく技術を磨いていました。その成果として、ストップウオッチ計測時の針飛びを解消する「垂直クラッチ」を発明。全く新しいアプローチでクロノグラフに技術革新を起こしたのです。その後も、クオーツやスプリングドライブなど、革命を起こし続けるのですが、グランドセイコー最新コレクションであるスポーツコレクションでは、セイコー革命の現在地を知ることができます。
このSBGC223はケースの随所にセラミックを用いて質感を上げつつ、ムーブはスプリングドライブのクロノグラフGMTを搭載。最高クラスの精度で2つの実用機構を味わえるのが魅力です。

IMG_8285 50周年を迎えたいまだから――。改めて人気定番・自動巻きクロノグラフの魅力を考えました|関口 優日本人である以上グランドセイコーには特別な思いがありますが、それはなぜかと具体的に考えると、それはセイコーが歩んできた革命の歴史にこのうえない尊敬の念を抱くからではないでしょうか。いまのセイコーの姿勢を体現するようなこのスポーツコレクションのクロノグラフを腕にすれば、自分も世界を驚かせるような仕事ができるのではないかと、そんな気持ちにさせられる腕時計なのです。

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HODINKEE 日本版編集長関口 優
1984年生まれ。芸能雑誌やモノ情報誌「GetNavi」の編集を経て、2016年より時計専門誌「WATCHNAVI」編集長に就任。2019年には腕時計愛好家を魅了するライフスタイル・メディア「HODINKEE」日本版初代編集長に就任。まず自分が試すことをモットーとしており、腕時計を買い続ける日々を送る。
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