スワンネック緩急微調整

スワンネック緩急微調整装置は、1888年以来、グラスヒュッテの時計製造における代表的な機能です。
左側と右側に白鳥の首に似たバネをスワンネック緩急微調整装置と言います。
片方は、伝統的な手法で緩急針を微調整するのに使用されます。白鳥の首の形をしたバネを調整することで、歩度（精度）をより正確に調整することができます。
そのため、調整の際には職人の指で軽く触れることが非常に重要となります。ひげゼンマイの有効長をほんの1㎜変えただけで、1日あたり1分の進みや遅れが出ることがあるからです。
長い緩急針がスワンネックの開いている方の端部とその反対側の調整ネジの間に固定されるため、緩急針が自然にずれるのを防止するというさらなるメリットが生まれます。

もう片方はグラスヒュッテ・オリジナルの正真正銘の独自装備で、アンクルの落ち方を調整することで、時計に規則的な「チックタック」という動作を与えます。

そして2つのスワンネックの製作にはかなりの時間と手間を割いています。
巧みにカーブを付けたスティール製の部品のエッジは、手作業で正確に45度の角度で面取りされています。
最後の鏡面仕上げと研磨作業には4時間かけて完璧な仕上げ作業を行い、初めて完成部品をムーブメント内に入れることが許されます。
優れた眼力、技術、そしてかなりの忍耐が必要です。

チラネジ付きテンプ

最後はテンプです。
テンプをよく見ると小さなネジがセットされています。これをチラネジと言います。
チラネジはもともと温度補正や精度調整として取り入れられていた技法なのですが、今は素材や加工技術も進歩しチラネジを取り付ける必要はなくなりました。
ですが、グラスヒュッテの懐中時計がまだチラネジ付きテンプを取り付けて調整していた時期を暗示するものとして、いまだにチラネジを取り付け続けています。

ほとんどの高級時計ブランドがチラネジのないテンプを採用しているのにもかかわらず、こうして伝統を大切にしている姿勢がなんだかとても素敵だなと感じます。

ところが実際に作るとなると、とても大変な作業になります。
小さなテンプにネジ穴（0.35㎜）をあけ、18個の微小なゴールドチラネジ（直径0.55㎜、重さ0.07g）を一人の職人が手作業でねじ込んでいきます。
万が一、作業中にテンプに傷をつけてしまうと時計の精度に影響が出てしまうので、慎重にネジを取り付けなければいけない非常に集中力と根気のいる作業です。
こうして完成したチラネジ付きテンプはとても美しく、なんだか特別感がありますよね。

最後は動画でムーブメントの動きをご体感ください

ついじっと見つめてしまうくらい、美しいですね…。
テンプは時計の鼓動を唯一感じることができ、なんだかこれぞ時計のロマン！と思ってしまいます。

いかがでしたか？
いろんな高級時計がありますが、ここまで手間をかけて伝統を守りながら作り続けているブランドはとても少ないと思います。
ここまで手間がかかるとやはり大量生産には不向きな時計なので、年間の生産本数もたった1万本未満と圧倒的少なく、なかなか簡単には入荷しない時計でもあります。

ご覧いただける商品は店頭にいくつかございますので、ぜひお手に取って実機をご体感ください。

こちらの商品、今なら店頭でご覧いただけます。